FUCK YOU SenkanY!!!!!!
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大和博士が目覚めると、そこにあったのはコーヒーカップだった。片手にそれを持ち、左手には書物を抱えている。見える言葉は祖国ドイツのもので、口調はやや古く、論じているのは人間の認識に関して。本来、それは哲学書であるはずなのだが、博士の目にはどうにも医学書か、あるいはお役立ち家庭の医学のように思えた。

目を上げると、様々な顔の職員が席についている。カフェテリアだと気が付く頃に、親の声より聞いた音を耳にする。博士に親がいるのか、筆者には分からないのだが。

撃鉄が下される直前に聞いた言葉は育良のもので、酷く冷徹なものであった気がする。

大和博士が目覚めると、そこにあったのは鉄扉だった。右手に煙草を持ち、左手はぽっけの深くにしまい込まれている。卓上のグラスに入った氷が知性の響きを鳴らすのが早いか、大和が言った「汚らわしい」と。須臾にして、大和博士の頭部は胴体から見てあるべき場所から消えてしまった。何が起こったのか、本人にもわからない。博士にとってただ確実だったのは、それがあまりに不快であることだけだった。

大和博士が目覚めると、そこにあったのは焼け焦げた荒野だった。右手にIDカードを持ち、左手には懐中時計が握られていた。周囲に立ち込める硫黄の匂いに顔を顰めると後方から聞きなれぬうめき声が聞こえた。振り返ると、そこには星霜の竜が間近にこちらを見つめていた。竜は何を言うわけでもなく、ただそれが、己の使命だと言わんばかりに、一片の躊躇いなく博士の腹部から上を喰らい取った。博士が竜の咥内に染みついた血の匂いに顔を顰めるには、意識が消えるのが早すぎた。

大和博士が目覚めると、そこにあったのは小太りの黒衣の男だった。彼は振り返り、笑って見せた。蚊帳の外になり呆然とする西塔に冗談を飛ばしたところまでは覚えている。問題は、その冗談の内容がなんであったか、もはや記憶にありはしないということだった。小太りの黒衣の男は似たような冗談を博士に聞かせたような気もする。いずれにせよ、博士は黒衣の男に殺された。何故そう言えるのか、筆者にすら分からないのであって。

大和博士が目覚めると、そこにあったのは監獄だった。結城博士がスピーカーからくだらぬ理論を捲し立てているのが聞こえる。博士は意に介さなかった。しばらくして、博士は彼女に多少の助言をしたつもりであったが、それを聞くや否や結城博士はマイクのスイッチを切ってしまった。
暫く待っていると、結城博士が幽霊でも見たかのような青ざめた顔で監獄に入ってきた。博士は二三冗談を飛ばして監獄を出て行った。腹も減って、カフェテリアもすぐそばにあるとし、博士はカツサンドを所望し往くのであった。

カフェテリアには司書がいた。図書保管庫の番人である。博士はどうにも彼女が苦手であった。彼女は特異に見え、非常に奇怪に思えた。
博士は「私は、これまでで100万回死んだのだ」と言った。彼女は一言だけ「そう」と言って取り合わなかった。彼女の眼は何も見ていないように思えた。その焦点は確かに博士を捉えてはいたが、その奥に何も見出せなかった。彼女はその冷徹な目付きをもってして、博士の自慢に悉く「そう」とだけ答えた。しかし彼女は博士の前から踵を返そうとはしなかった。

そこで博士はある寓話を思い出し「あぁ」と呻いた。博士は耐えきれなくなり、悶え、苦しみ、拳銃を取り出した。
「糞のような筆者め、貴様のナルシッシズムとエゴにはもうウンザリだ。恥を知れ」
大和博士はそう叫んでから銃口を咥え、引き金を引いた。
彼女はいつまでも、その死体を眺めていた。

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