蒐集院「竹取物語・現代訳」
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かぐや姫を守る為に屋敷の各所に配置された兵達は、空から現れた飛行物体に向けて、キリキリと弓を絞り、一斉に攻撃を開始した。通常ならば勢い良く飛ぶ矢は急激に失速し、地面の上にバタバタと落ちた。

牛車の中で事の顛末を見守っていた帝は御簾をソッと捲って、外の光景を確認した。通常ならここで厳つい家来に顔を出さないように咎められるはずであるが、牛車の左右に狛犬のように配置した家来は、満月の方を見て、顎が外れるほど大きく口を開き、目の玉を剥く如く瞠目していた。

「今まで育ててくださり、ありがとうございました」

かぐや姫は袂に口をあて、二人の老いた両親に礼を述べたかと思うと、音もなくすっ……と立ち上がり、滑るように移動した。庭の中央に直立したかぐや姫は帝、家臣、老夫婦が見守る中、少しだけ悲しそうに微笑んだ。かぐや姫は丁度、空飛ぶ銀の円盤の真下にいる。銀の円盤の丸い窓から全身タイツのような服装をした人型が顔を見せた。手には警戒のためだろう、レーザー銃を所持している。

かぐや姫は顔を真っ直ぐ上に向けた瞬間、彼女の全身はギラギラとしたスポットライトのような光りが照らせれた。かぐや姫の垂直に身体が浮かび上がり、やがて円盤の中に吸い込まれるように消えた。起動音を響かせる銀の円盤は更に強い光を発した。その場にいる者全ての眼が眩んだ瞬間、円盤は高速で不規則な動きを繰り返し、夜空の果てに消え、やがて地球上からいなくなった。

かぐや姫と高速で移動する円盤がいなくなった半時間……誰も動き出すことが出来なかった。それはかぐや姫がいなくなった悲しみのために身体が縛られたのではなく、先程目撃したものが一体何であるのか理解し、落ち着くまでに時間を必要としただけである。
 
 
 
蒐集院「竹取物語・現代訳」より抜粋

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